浦和地方裁判所 昭和59年(モ)285号 決定
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【判旨】
原告の申立ての趣旨は、「本件訴訟を福岡地方裁判所小倉支部に移送する。」との裁判を求めるというのであり、申立ての理由は次のとおりである。
一 原告と被告の最後の共通の住所は、埼玉県朝霞市溝沼三丁目五番二〇号金井マンションB棟一〇二号室であつたから、本件訴訟の管轄は、人事訴訟手続法一条一項の規定により浦和地方裁判所に専属する。
二 しかし、本件訴訟は、次の理由により福岡地方裁判所小倉支部に移送されるべきものである。
1 被告は、昭和五七年九月二七日前記最後の共通の住所地から肩書住所地に転居し、その旨の住民登録をした。
2 本案前の家事調停は、家事審判規則四五条の規定により福岡家庭裁判所小倉支部において行われ、被告の申立てに係る婚姻費用分担調停事件については、同小倉支部において調停が成立した。
3 本件訴訟において証人として尋問される予定の原告及び被告の各両親並びに媒酌人夫妻は、いずれも福岡市又は北九州市の周辺に居住していて、浦和地方裁判所まで出頭することは困難である。
4 原告は、本件訴訟において未成年者牛嶋尚子の親権者並びに監護者の指定、子の引渡し等を求めているところ、家事審判規則五二条は、子の監護に関する審判事件の管轄を子の住所地の家庭裁判所と規定している。
5 したがつて、本件訴訟については、著しい損害又は遅滞を避けるため移送の必要があるから、人事訴訟手続法一条の二の規定によりこれを前記のとおり移送すべきである。
そこで、当裁判所は、次のとおり判断する。
一記録によれば、原告と被告は、昭和五四年九月一一日婚姻をした夫婦であつて、夫婦の最後の共通の住所は埼玉県朝霞市にあつたが、被告は、昭和五七年九月同市から北九州市八幡西区に転居し、その旨の住民登録も済ませた事実を認めることができる。
二したがつて、本件訴訟は、人事訴訟手続法一条一項の規定による第二順位の専属管轄として、浦和地方裁判所の管轄に専属する。
三原告は、同法一条の二の規定により本件訴訟を福岡地方裁判所小倉支部に移送すべきであるというのであるが、そのためには同小倉支部が本件訴訟について管轄権を有することが必要であるところ、同法一条一項の規定に照らせば、同小倉支部は本件訴訟について管轄権を有しないものというほかない。換言すれば、同法一条の二の規定は、同法一条一項の規定による第三順位の専属管轄の定めに従い、専属管轄に競合が生じた場合に限つて適用されるものというべきである。
四してみれば、原告の訴訟移送の申立ては不適法なものであるから、これを却下することとし、主文のとおり決定する。 (加藤一隆)